怪獣記

雑誌などにも、今年のベストブックとかの
記事が紹介されるようになりました。
2007年もいよいよ大詰めですね。

で、僕自身のベストブックですが
フィクションでは、なかなか絞れないところですが
ノンフィクションでは

先日一気読みをしてしまった
「イタリアでうっかりプロ野球選手なっちゃいました」
八木虎造 著 小学館
(こちらも、抱腹絶倒のお話でした、
感想や内容については、後日紹介したいと思います。)



こちらの本でしょう

12月17日オンエアー 第142回放送分
「FURANO History Factory(=FHF・フラノヒストリーファクトリー)」
放送を終えました。

高野秀行さんは、海外の辺境を舞台に、探検をはじめとした
オモシロ体験をたくさんしていて、
それを本にしている方です。

そもそもデビュー作が、彼が、早稲田大学探検部で
アフリカの奥地にUMAモレーレ・ムベンベを探しに行ったという
「幻獣ムベンベを追え」(集英社文庫)で
(畏友のp氏は、僕が、これまた高野氏の
傑作青春記である「ワセダ三畳青春記」を読んでいるとき
p「何読んでるんスか」
とか聞いてきて
僕「いやー、高野秀行の…」
と、言うやいなや
p「ムベンベかっ!」
と間髪入れず言ったことがあります。
さすが達人)

こちらも面白いUMA探しの本でしたが
そんな高野氏が、トルコ東部のワン湖に棲むといわれる
巨大未知動物「ジャナワール」の真偽を求めて、
トルコへ行ったところ、この「ジャナワール」に思わぬ
政治的な思惑が絡んできていることに気が付いて、
それでも現地に向かい調査を開始、
そして、最後の最後で湖に浮かぶ謎の黒い物体…

といった、お話しが
僕的に今年でトップのノンフィクション
「怪獣記」(講談社 刊)のあらましです。

政治的思惑とか書いていますが
内容は極めてのんきな感じで
それが高野さんのペーソスあふれる文章で
淡々と書き綴られていて

つい、読みながら
何度も吹き出してしまうことウケアイなのです。


帯の推薦文で、角田光代さんは

「短パンに裸足、右手に板きれ、左手にカメ、
そして幼児用ボートで怪獣捜索へと乗り出していく
高野さん、カッコよすぎます!」

と書いてあります。

どんな経緯で、上のようなオモシロカッコいいシーンになるのかは
是非読んで確認をしてほしいのですが


この政治的な思惑というのが
トルコとクルド人の関係でして、
クルド人が多く居住するワン湖周辺で
トルコ政府が、プロパガンダとして
「ジャナワール」を使ったりしているのです。

この本が出された、07年7月当時は
のんきに「アハハハハ」などと笑いながら読むことが出来たのですが、
最近は、トルコ東部の状況が違って来ています。


今月1日の毎日新聞の記事です。

【エルサレム前田英司】トルコのエルドアン首相は30日、軍に対し、同国からの分離独立を掲げるクルド系武装組織「クルド労働者党」(PKK)が潜伏するイラク北部に越境攻撃する許可を与えたと明らかにした。
 ロイター通信によると、首相は「28日の閣議で(攻撃許可を)決定した」と述べた。PKK掃討を巡っては、トルコ国会が10月17日に軍のイラク越境侵攻を承認。今回、政府が正式に「ゴーサイン」を出したことで、軍が攻撃を開始する条件が整った形だ。
 ただし、政府の強硬姿勢は、PKK掃討を求める世論の高まりに配慮したとの見方もあり、軍がただちに実行するかどうかは不明だ。PKKの潜伏先は山岳地帯にあり、冬入りで既に積雪している。このため、攻撃に踏み切ったとしても大規模な陸上部隊の投入は現実的ではなく、潜伏拠点を狙った空爆などに限定される可能性が高い。現地からの情報によると、今のところトルコ部隊の動きに大きな変化はないという。
 トルコは最大10万人ともいわれる軍部隊をイラク北部との国境地帯に集結させ、米国やイラクにPKK対策での協力を迫っていた。クルド人地域のイラク北部は同国内でも比較的安定しており、米、イラク両政府は情勢の不安定化を懸念してトルコに越境攻撃の自制を求めてきた。

ついでロイター共同の記事です。

[アンカラ 1日 ロイター] トルコ軍当局者は1日、イラク北部で非合法武装組織クルド人労働者党(PKK)に対してヘリコプターによる空爆や砲撃、特殊部隊による越境攻撃を行い、PKK側に大きな被害を与えたと述べた。
 トルコのエルドアン首相はこの前日、政府が軍に対してこういった作戦を許可したことを明らかにしていた。
 軍当局者によると、トルコ軍は約100人の特殊部隊をイラク領内に投入したほか、ヘリコプター最大6機を使ってPKKの拠点を空爆。特殊部隊はすでにトルコ領内に戻ったという。トルコ軍はウェブサイトで、PKK側に多数の死傷者が出ているとの見方を示した。
 一方、PKKの関係者はイラク北部スレイマニヤで匿名を条件にロイターに対し、トルコ軍による攻撃はなかったとし、死傷者も出ていないと述べた。同地域では、約3000人のPKKメンバーが活動しているとみられる。


この記事のそもそもの根底になっているのは
トルコ人国家「トルコ共和国」と
「クルド人」の民族的な対立です。


「クルド人」は
トルコ、イラク、イラン、シリアなどにまたがる山岳地帯の
クルディスタンと呼ばれる地域にに主に暮らす民族で
総人口は2000万〜3000万人に上り、
「国なき最大の民族」と呼ばれるほど
独自の国家を持たない1つの民族としては
世界最大の人口を要しています。

ペルシャ語系のクルド語を話し、イスラム教スンニ派教徒が多く。
中東ではアラブ人、トルコ人、イラン人に次ぐ人口を要する民族ですが、
それぞれの国では少数民族の立場にあります。


もともとは、オスマン帝国の領内に居住をしていましたが
第一次世界大戦でオスマン帝国が破れ、
フランスとイギリスの間で結ばれた、戦後の中東経営をめぐる
「サイクス・ピコ協定」で、戦後の国境線が引かれます。

これと別に、アラブ人が連合国側に協力するために
アラブの独立を約束した「フサイン・マクマホン書簡」や
ユダヤ人が連合国側に協力するために
ユダヤ国家の設立を約束した「バルフォア宣言」といった
もろもろの二枚舌、三枚舌外交が、パレスチナ問題の
きっかけにもなるのですが…

さて、この「サイクス・ピコ協定」や、これ以降での分割協議で
フランスの勢力範囲とされたシリアからは
レバノン・シリアが独立し
イギリスの勢力範囲からは、
後のイラク・クウェートがうまれましたが、

ここらへんの国境線が妙に真っ直ぐなのは
(シリア・イラク・ヨルダン・サウジ国境など)
これによるものです。

そして、この国境に分断されてしまったのが
クルド人だったのです。


最初は民族主義的な勢力が興らないで、
それぞれの国の中で少数民族の立場に甘んじていましたが
20世紀後半、文化的な圧力の元で政治勢力が誕生し
大きな人口を抱えるトルコやイラクでは分離独立を求めたため
しばしば迫害をうけるようになりました。


中でも、トルコ国内には最多の1200万〜1500万人のクルド人が
住むとされますが、(トルコの総人口は約7200万人です)

オスマン帝国から革命で誕生したトルコ共和国は
人民党政権が単一民族主義をとったので
91年まではクルド語の使用が禁じられ
放送、教育なども禁止されていました。

そのような状況のなかで、民族的アイデンティティーに目覚め
先鋭化していったのがPKK(クルド労働者党)で
彼らが中心となり、イスタンブル等で、独立闘争の一貫として
テロを起こすなど、激しくトルコ政府と衝突するようになったのです。

こちら、政党と名乗っていますが、トルコ政府ならびに
親トルコの立場をとる日本政府はテロ組織と見なしています。


一方、イラクでクルド人は、サダムフセイン政権下で弾圧され
特にイラク・イラン戦争では、イランに荷担したとされ
化学兵器で攻撃されたりしました。

が、フセイン政権がイラク戦争で崩壊すると
自治権を獲得、クルド愛国同盟の「タラバニ氏」が
大統領に選ばれるなど、中央政府にも影響を与えるように
なりました。

そして、ほぼ全土が外務省により渡航禁止とされている
イラクの中で、少しだけ緩く渡航制限となっているのが
クルド人自治区なのです。

しかし、このイラク国内のクルド自治区が、
トルコ国内のテロの温床であると見なしたトルコ軍が
越境して攻撃をしてきたのが、前述の記事なのです。

以来、イラク・トルコ国境というのは、
現在やっかいな地域の一つでもあるのです。


ただ、トルコはなかなか対クルドのテロ根絶が
出来ない状況にあります。

その理由については
また、来週お話ししたいと思います。


そういえば、来週の放送ですが
31日[月曜日]、ラジオふらのでは
終日J−WAVEの放送を流すことが決定しまして
来週24日の放送が今年最後の放送となります。


また、仕事のシフトの関係で生放送になります。
よろしければ、おつきあいのほどお願いします。

ごきげんよう。


追 かつて阪神タイガースで選手やコーチとして
活躍をされていた島野育夫さんが
お亡くなりになりました。

氏のご冥福をお祈りします。



現在の世界情勢は本当に脂っこいので
どうやって伝えるか思案をしている
「イトー×ani」がお届けする 
FURANO History Factory (F.H.F.フラノヒストリーファクトリー)
コールサインJOZZ1AS-FM  周波数77.1MHz
北海道富良野市とその周辺で聴くことが出来る
コミュニティーFM局「ラジオふらの」の
毎週月曜日午後四時からオンエアー中

番組へリクエスト・メッセージは
〒076−0026 富良野市朝日町2−17
 レストランふらの広場内ラジオふらの
E-mail radio@furano.ne.jp 
FAX 0167-22-2787

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受付します。

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Author:イトー×ani:歴史の旅のナビゲーターを自称


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