11月の三連休で訪れた、群馬~東京巡礼のお話しの続きです。

この日は、群馬サンバカーニバルを満喫したのちに、
太田の宿に戻って、ブログの更新などをしながら、ゆっくりと夜を過ごします。

そして、翌日は朝9時過ぎに宿をチェックアウト。
そのまま太田駅にむかって、9時34分発の「りょうもう18号」に乗り込みます。
2年ぶりの「りょうもう」号ですが、前回は指定席がとれずに、
途中から立ち席でお世話になったという記憶もあったので、
前日に太田駅で指定席を手に入れました。

私鉄の車両ということもあって、シンプルな、洒落た感じの車両だったり、
いかにも晩秋の北関東という風情味わっているうちに、
この日も寝不足だったということで、館林を過ぎてから意識が飛んで
気がついたら東武動物公園でした。

その後は、越谷の団地との再開に感動したり、
間近で見えるスカイツリーに圧倒されたりと、
学生時代は東武民だったにもかかわらず、あまり縁がなかった線を堪能したのでした。

それにしても、最近の路線図は、東武動物公園までがスカイツリーライン
そこ以北が伊勢崎線という記述なんですね。
しかも路線図みてもどこにも東武野田線の記述がありません。
変わるものです。

浅草には10時55分に到着。三連休の中日ということで、
大変混雑をしていますが、ま、観光地浅草なら当然ですか。

東武浅草駅から歩いて行くと和菓子屋さんとかに長蛇の列が出来ています。
雷門を左手に見ながら道路を左折。雷門から南下する大通りを150m程歩くと、
右手にお店が見えて来ます。あ、ここも何人か並んでいます。
開店時間直後に行ったのに、人気店だからしょうがないですか。

この日の昼の目的地は「並木藪蕎麦」です。
こちらは「食の軍師」三巻のなかの攻城の六「蕎麦の名城」に出てきたお店で、
メニューにない「鴨南ばんのぬき」をなかなか注文できない本郷が
「にゃきのり~」などと日和ったことを言った回でした。

うむ。どんなものか。

ビルの狭間に息づく、風格を感じる佇まいは、いかにもお江戸のお店です。
木の看板に「藪」と大書されているのも雰囲気あります。
本郷も食の軍師の中で
「うーむ 改装してなお この凜としたたたずまい」 などといってました。

僕の前に並んでいる人は2人。開店直後でも、まぁ、納得といったところですが、
僕が並んだ後にどんどんと列が続いています。
ゴロちゃんが嫌いなシチュエーションですが、ま、僕はヘーキです。
真っ白に塗られた壁とかを見ながら、綺麗に掃き清められて
打ち水がされたところに黙って並んでいると、
後はお年を召した方が並ばれていましたが、お店の人がイスを出してくれていました。
いい気配りです。

待つことしばしで、開店直後に入ったと思われる人が出てきたので、中へ案内されます。
入り口の扉をカラカラと横開きしてから、紺色の暖簾をくぐって
入り口近くの4人掛けの席に腰を下ろして、
壁に並んだ達筆なお品書きを見ながら、。
冷一合と、わさびいもに、「にゃきのり」ではなく「焼き海苔」を注文。

わさびいもも焼き海苔も本郷がオーダーしたメニューですが、
氏がおかして後悔した「ボコビーの愚」(蕎麦屋に入って条件反射でビールと板わさを頼むこと)
を避けるべく、今回はいたわさとビールはなし。

注文を終えて周囲を軽く監察すると、
右手側に座敷席、左手に土間のテーブル席で、奥が厨房のようです。
私の席は4人掛けのテーブル席でしたが、
それぞれお一人様が自由な空間を味わっています。

すぐ横には、色あせた「里見弴」氏の色紙が飾られていて、風格がある店内。
立て替えたそうですが、しっとりとした感じが残っています。
外の打ち水の時にも思ったのですが、隅々まで丁寧な清掃が行き届いていて、
ここにもお店の伝統を感じますし、
かといって緊張を強いられる感じではなく、すごい居心地がいいです。

座敷では集団客がお昼から盛り上がっていますが、
そんなに気にならないのも、こちらの居心地の良さ故でしょうか。

そんなことを考えていると、お酒が登場。

すっきりとした見た目の白磁の徳利と、藪の刻印された、受け升が渋いです。
横に添えられた蕎麦味噌もいいですよ。

添えられた切り子のような模様の入ったグラスにとくとくと注いで、いただきますと。
きは~っ、うめえ!!
五臓六腑に染み渡れりなう! です。俺、今生きている!! です
白磁の徳利によく似合う感じのすっきりとした飲み口で
胃の腑にすとんとおさまって、かるくかっとなるのが
いいお酒の証拠です。

添えられてきた、こってりとした甘めの蕎麦味噌は、
素朴な濃い味わいがとても美味しく、お酒をひきたててくれます。
さらに待つことしばしで、わさびいもと、焼き海苔が登場。
わさび芋にはあたりまえですが、焼き海苔にもわさびがそえられています。

まずはわさび芋から。

見るからに色白で、ふっくらとした感じのわさひ芋は、
箸をすっと受け入れるやわらかさで、淡雪のようですが、
ここは山芋。持ち上げるとしっかりと塊でついてきてくれます。
この弾力。はじめてです。
軽く山葵を乗せ、口にすれば、口の中で溶ける、きめ細やかな繊細さと
滋養という言葉がぴっさたりの底力を感じる味わい。
軽くかけられている汁もいい感じですし、ああ、これは美味しい。
本郷が「わさび芋うまし」と言うはずです。

続いて焼き海苔。こちらは、四角い木箱に入っていて、
箱の底に炭が仕込まれているので、ずっと炙られていて
パリパリな食感を楽しめます。
海苔も磯の香りがただよってきて鮮烈ですし、
味わいもしっかりとしていて、健康になりそうです。

これがずっとパリパリしているのだから、いいですね。
わさびを添えて醤油を付けても美味しいですし、
本郷が「食の軍師」の中で試した、海苔にそば味噌をつける
超高度な複合技もいい感じ
サイコータカモリ。で、お酒もすすみます。
これは本郷も復活するはずです。

そんな感じで食べ進めていると、私の隣に座った人は
アジア系のお客さんでしょうか、お店の人が
ホットヌードル オッケー なんて説明しています。
インターナショナルです。

さて、そろそろわさび芋も焼き海苔も残り1/3程度になってきましたし
お酒も開いてきたので、追加の注文。

ここで、鴨南ばんのぬきと燗酒をオーダーします。
品書きのどこにもないのでビビった本郷がしたように
丁寧に「鴨南ばんのぬき、よろしいですか」と聞いたら
「はい、出来ますよ」といわれまして、よかったよかった。
きちんと祝詞を唱えることが出来ました。

ちなみに、鴨南ばんは、11月~3月限定のメニュー。
だからぬきも、同じ時期にしか食べることが出来ないメニューなのです。
だからこそ、この時期にこちらの店を訪れたのです。

燗酒が登場。こちらは、白磁のお猪口がついてきました。
本郷が薄くて浅いお猪口 といったものです。
うん。燗酒も美味し。こちらもしみじみと染みます。

そして、満を持してやってきたのが、鴨南ばんのぬきです。
鴨南ばんの蕎麦の入ってないものです。
食の軍師の中では
「「ヌキ」とは「台抜き」とも呼ばれ、本来タネモノそばである鴨南蛮そばや
天ぷらそばのそばを抜いてもらったメニュー
これをアテにして酒を飲り、シメにもりを一、二枚
頼むのが通人、粋人とされる」
と解説されてました。

そんな鴨南蛮のぬき。茶色く四角い盆にのせられて、登場。
他の人が召し上がっているおそばよりも
やや小さめの蓋付きの重厚そうな陶器の鉢が雰囲気です。
スープがややこぼれかかっているのもいいですね。。

蓋を開けていただきます。
表面にたっぷりの脂が浮いた濃そうな汁の中に
たっぷりの鴨・つくね団子・そして彩りの葱です。

まずは、鴨から。
肉厚ながら、 軽く噛んだだけでかみ切れる柔らかさ。
ステーキで言うとレアな感じでちょうどよく火が通されています。
鴨肉は、火を通しすぎると、すぐに硬くなるので、半分生くらいの加減で、
加熱をやめなければならない。これは絶妙な塩梅です。
しかも、鴨ならではの鶏系の肉のなかでもしっかりした
野趣に富んだ味わいがウレしいですし、
レアならではの肉滴も、濃いつゆとあいまって、美味しい。

脂もたっぷりとついていまして、脂自体も美味しいですし
つゆに脂が溶け込んでいるところも、嬉しいです。
これがたっぷり5きれ程度入っています。
それから、鴨肉のつくね団子もほっかほかですし、
挽肉の料理ということで、フワフワな食感と美味しい肉滴を
より多く味わうことが出来ます。

葱も、葱自体の甘さと共に、汁を吸ってやわらかく
びっくりするくらい美味しくなっています。
先日読んだ銀平飯科帳で、ねぎま鍋は葱をたべさせる料理的なことを言ってましたが、
鴨の脂がたっぷり溶け込んだ汁の効果でうまくなっているのです。

そして、それらの具をしっかりと支えているのが、並木名物の濃いつゆです。
汁はしっかりとしたかえしの味わいとともに、自然な旨みがいい感じですし、
暖められているせいで、冷たいそばの汁ほどのインパクト有る濃さを感じずいい感じで、
それは、汁にういている鴨の上品な脂の効果もあるんでしょうか。

これが後述しますが、美味しんぼにも出てきた並木藪の汁です。

この汁だけで、お酒がすみます。鴨をつつきながらお酒をやるのも、
葱やつくねでやるのも、汁をアテにするのも、組み合わせは自由自在。
汁を飲んだあとのお酒のすっきり具合の素晴らしさ。ああ、いいなぁ。

本郷も
「うまい!
脂が違う この汁で 何本でも飲めるぞ」   ズビビビビ
と言ってました。うん納得です。

と鴨南ばんの抜きも残りわずかになりましたので、しめにお蕎麦をいきます。
焼き海苔が美味しかったので、のりかけそばを注文します。

残った鴨南ぬきでお酒をチビチビしながら待つことしばしで
四角い盆に乗ったお蕎麦が登場です。
おそばき淡く緑色がかった鮮やかな白灰色で、たっぷりのりがかかっています。
漂う、爽やかな蕎麦の香りも気分をアゲてくれます。
小皿には淡い色合いの山葵と葱
そして、徳利に入った汁です。
では、まずいただきましょう。

うん、清冽な味わいですが、すごく軽やかな感じです。
口の中に広がる蕎麦の香りもそりげなく口内を満たしてくれて
そして、すとんとのどに落ちていきます。これが喉で味わうというやつで、
それだけでにこにこしてしまいます。
北海道でお蕎麦を食べていると、これでもかと蕎麦自体の香りとか
味わいのみを全面におすようなお店もありますが、そんなことなく
非常にバランスの良さを感じます。

そして、汁です。
さきほど、鴨南ばんのぬきでも味わいましたが、
冷たいのと脂がないので、そのシャープさが伝わって来ます。
汁自体が辛口の味わいと濃さがインパクトのあるのですが
その中にまろやかさやしっかりと旨みあるのです。

このパンチの効いた汁をちょこんと蕎麦をつけて食べると
すっきりとした蕎麦の味わいをしっかりと引き立ててくれます。

某有名落語家が、末期に「死ぬ前に蕎麦にたっぷりと汁をつけたかった」
などと言った話しですが、汁に蕎麦をひたすとヤボだから
見栄を張ってそういう食べ方をしていたのだと解釈をしていましたが、
こういう店なら、たっぷりつけないほうが美味しいものの
そんな冒険を1度くらいはしたかった、ってな解釈になるのでしょうか。

複雑な旨味の重層構造の正体は、鰹節から出汁をとるのも、
かえしとみりんをあわせて馴染ませるのも、それぞれ何日もかけるという
想像を超える手間をかけたみのです。
美味しんぼの初期エピソードで、屋台のおそば屋さんが自分の汁にインパクトがないのを
自覚しながらもうまくいかなくて悩む青年に、作り方を見せるので出てきたのが、
こちら、並木藪蕎麦さんでした。

そんな汁と、シンプルながらしっかりと芯がある蕎麦の味わいのマッチングに
上にちらされた海苔もいい味わい。先ほどの焼き海苔とまた違う表情を見せてくれます。

あっという間に手繰ってしまい、
最後に、蕎麦つゆを、土瓶に入った蕎麦湯で割って頂きます。
あー、蕎麦湯も濃くていいですね。
ご馳走様でした。

勘定をし「ありがとうございま~す」 の声に送られて、外へ出ました。

ちなみに、こちらのことを、池波正太郎さんは
自著の「散歩のとき何か食べたくなって (新潮文庫)」の中で、

『初冬の、鴨なんばんが出はじめるころの、平日の午後の浅草へ行き、
ちょっと客足の絶えた時間の、並木の[藪]の入れ込みへすわって、
ゆっくりと酒をのむ気分はたまらなくよい。
 その店構え、飾り気がなくて清潔な店内、むかしの東京をしのばせる蕎麦道具。
ここでは決して、民芸趣味の、まっ黒で大きな器を使ったりしない。
あんな器に入った蕎麦は、私は食べる気が消えてしまう。
 そして、女中たちの接待もまた、ここは、むかしの東京を偲ばせるに足る。』

と書かれていますし、

杉浦日向子とソ連編著の、「ソバ屋で憩う」でも、巻頭を飾る「特撰五店」の
一つとして紹介されています。

これぞ・・・・まさしく、「蕎麦屋で憩う」
いい気分までいただいて、ごちそうさまでした。

そして、大満足で外へ出たら、行列が更に長くなっていました。流石です。


そんなのを後目に神保町に行って、いつも通り書店を何軒がしばいたのちに、
この日お世話になる南阿佐ヶ谷の宿にチェックイン。
しばしまったりとしたあと、5時30分過ぎくらいに宿を出て、
西荻窪に向かいました。

ここに来るのは、孤独のグルメ巡礼で、「バルダザールカフェ」さんに来て
自然食の定食をたべながら机をぺとぺとさせて以来です。

JRの西荻窪駅南口からアーケード街をくぐること3分ほどで、商店街を歩きます。
ここも、FC東京ののぼりがさがっていて、三鷹で巡礼したことを思い出します。
そして、商店街を右折すると

!!

明日、巡礼する予定の場所です。
間違った場所を指定したかと地図を確認するとあっています。
そこで、さらにほんの少しだけ行きますと、
ありました。居酒屋『しんぽ』さんです。(マンガの中では『しんか』)
『食の軍師』3巻 攻城の一、松茸の名城で、宝くじで10万円を獲得した本郷が
秋の味覚を求めて行ったお店です。
マンガで見た感じはもっとシブい作りという印象ですが
きれいな真っ白な壁が印象的。
さて、入れるかなとのれんをくぐって中へ。

「1人ですけど入れますか」と聞いたら、7時までならいいですよとのこと。
ああ、良かった。
ということで、カウンター席に腰を下ろして、喉の渇きを蹴散らす生ビールをオーダーしたのち
メニューを吟味。
こちらは毎日メニューが違うようで、この日も11月××日のメニューなどと
書かれています。

でも、なんど見ても、アレがありません。
本郷がありつけなかった松茸です。さんまはあるのですが、松茸はない。
さんまもまつたけも食えなかった本郷が
「ぞ はー」とブレイクダンスのヘッドスピンをきめながら
大ゴケしたのですが、この時期にこちらのお店にいったのは
松茸ねらいでしたが、ま、残念ですが秋刀魚の塩焼きはあります。
と、いうことで、本郷が「い~のォ」といった秋茄子の田楽と、
本郷が食えなかったさあんまの塩焼きをオーダー。

ビールを飲みながら、軽く周囲を眺めます。
向いが厨房、厨房沿いにLの字型のカウンターカウンターになってまして
後にはテーブル席もあります。中は9割くらいの入りで、みなさん楽しそうです。
2階もあるようです

そして、向の厨房を見ると、賀茂ナスが捌かれています。 お、オレの秋なすかな。

それにしてもデカいですね。一人前とは思えないほどです。
これはスゴい。ビールをチビチビしながら焼き茄子が炭火の上に置かれるかと思いましたら、
こんどは銀色に光る大ぶりのさんまに塩をふっています。
おお、さんまもデカいし、ピッカピカに輝いてイキがよさそうです。
さらには、このデカいサンマに串を打ち出しました。そしてこちらも
炭火でじっくりとあぶり出します。そんな職人さんの繊細な手仕事を見ていると
気分も上がってきます。カウンター席の醍醐味ですし、
カウンター席という絶好なポジションでは、しっかりと技を堪能することができます。
焼肉はライブ、鉄板焼きはライブ というのは孤独のグルメの名言ですが、
炭火焼きもライブです。

と、四角い道道としたお皿にのせられて、賀茂茄子が登場。
やはりでかいです。鮮やかな皮の黒光りする鮮やかな濃い紫色と
なかでじゅうじゅうと音を立てている淡い碧色の組み合わせ
その上にたっぷりと乗った濃厚そうなお味噌です。
この威風堂々としたタタズマイが頼もしいです。

まずは、味噌の付いていないところに箸を入れて一口いただきますと
箸で軽く触れたた段階でなす滴がじわっと染み出てきます。
これ絶対美味しいあれです。
そして、口の中にいれると予想通りの美味しさです。
食べ口はふわふわですし、味わいも、
なすの淡白ながらも、しっかりとした青い旨味が口の中に広がります
そして溢れるなす滴です。この滴があまくも美味しいです。

そして、続いて味噌のついているところを頂きますと、
あー、これもタマラン味わいです。
軽やかな甘さとしっかりとした濃厚さに複雑な旨味の組み合わせ
軽く舐めるだけで、その美味しさに、お酒がすすむしろものですし、
これが淡白ながらもしっかりとした味わいの茄子を引き立てるのです。

この炭火で煽って内側からほっこりじんわりと美味しくなっているところが
これも軽く炙られたおかげで香ばしくする感じる味噌とあう組み合わせ。
ありがとう、炭火です。あああ。美味しいなぁ。ビールも軽くあいちゃいます。

ということで、ここでお酒に移行。田酒を焼き物にあいそうなヒヤをいただきます。
うん、冷や酒も染みますし、茄子は、お酒にも当然ばっちりあいます。
この濃厚な味噌と茄子を、シュッとした日本酒で胃の腑に落とす快感は
何物にも代えられません。

と、茄子の皮底にこびりついている身を刮いでいます。
この段階でもまだなす滴が出てくるのもスゴいなぁなどと思っていると、
本日の主役のあと逸品。さんまの塩焼き登場であります。

こちらも堂々の長四角い1枚皿にのっかっていますが、
まずはさんまが大ぶりです。しかも、さんまの塩焼きといったら
秋刀魚の名前のごとく、ぴんと身がまっすぐなのですが、
こちら川魚の塩焼きのごとく、美味しそうに弧を描いているのです。

ああ、このために串を打っていたのですか。
これも美味しくなる工夫です。

炭火によって表面に躍り出た油がパチパチと爆ぜていますし
軽く焦げた部分も香ばしい感じに色がかわっていて、目で見ても楽しい。
正しいさんまの塩焼きです。
たっぷり乗った大根おろしも頼もしいです。
大根おろしの頂きを軽く醤油でそめてからいただきます。
下っ腹のあたりをはしでさすと、簡単に身がほぐれてとれます。
いい感じです。
身をむしっとする時に、ふわっと湯気がたのぼるのもいいです。
口に入れると、うん、油がのっていて美味しいです。
しっかりと青魚ならではの滋味深い旨味が出てきていまして、
これがまずは秋刀魚のいい前奏曲。
いっしょについてきている焦げた皮も絶妙なアクセントです。
しかも、骨からの身離れもいいです。これはいいさんまだなぁ。
小骨とかも気になりません。

そして、さんま食いの醍醐味といえば、ワタですワタ
さんまの身をほぐしていって、奥の方からいただきますと。
このニガうまさ。苦さが嬉しいとか、
子どものころには考えも付かなかったことです。

「さんま、さんま
さんま苦いか塩つぱいか。」
佐藤春夫さんの詩も脳裏に出てきます。

そして、この絶妙の油の乗ったニガさも、お酒とよくあいます。
日本酒の肴って、なぜこんなクセモノの味わいのものを
しっかりと包み込んで美味しさにかえるんでしょうか。
もう、よくぞ日本人に生まれけりです。

さらに、軽く醤油でそめた大根おろしをそえると、
これまた絶妙な味わい、魚の油が乗った深みのある苦みと
大根の爽やかな清涼な苦みという方向性の違いが
それぞれをひきたてあっていますし、軽くかけたすだちもいい感じです。

食べ進めていきながら、骨から身を剥ぐのも楽しいです。
骨周りの肉の味わいもいいですし、
魚を綺麗に食べられる人って、なんかいいな。
とは思うのですが、生来不器用なのに加えて、、酔いのせいもあってか、
結構グズグズになってしまいますが、酔っ払いの前では些細なことです。

そういえば、食の軍師の中で、本郷も妄想していましたね。

そして秋の王者 新サンマ登場!!     じゅわー
身もウマシ!  ワタがさらにウマシ!  ガキにゃわからん  苦みの旨さだぜ!!

もちろんその頃には 酒は今季初の燗酒に 移行している

一合ずつでね♪ ぬる燗でね♪      金はあるんだ大吟醸

サンマの身に 大根おろし醤油を からめて一口くって      エアーサンマ
お酒でキュ         エアーカンザケ
タマンネッス!!


微妙に、昼のぬきとそばが残っているおかけで、この時点で満腹です。

このあと予約のお客さんも来ると言うことで、頃合なので、こちらを辞します。

ただ、念願のまつたけはマダですし、
お刺身も揚げ物も、キンキの煮or焼とか和牛ロースのステーキorビフカツも魅力ですね
あなごの白焼きとかも食べていないので、
機会を作って、お腹ぺこちゃんの時に再訪したいなと思いながら、
南阿佐ヶ谷の宿に帰還したというわけです。




さて、今回宿を南阿佐ヶ谷にとったのは、2日連続で西荻窪に遠征をするからです。
前日は「しんぽ」さん、そして、この日は「しんぽ」さんのほんとにほど近く。
向の並びの3軒程度先の、「三ちゃん」さんです。
巡礼店がこんなに近いのは、はじめてです。

さらに3分ほど歩くと、自然食の「バルダザール・カフェ」さんもありますし、スゴいな、西荻窪。


ただし、厳密に言うと、こちらは久住さんとは直接関係ありません。
マンガ「孤独のグルメ」2巻 に所収されている、平松洋子さんの
巻末エッセイに登場しているお店です。

原作にのっている本で、凍結中のパリは除いて、新店も行きたいと思った時に、
こちらに行って見ようと思ったのです。
なに、ドラマ「孤独のグルメ」のお店だって、久住さんは
ロケのあとに行ってご満悦じゃないですか。だったらここもええんや。
と自分に言い聞かせて、巡礼のターゲットとします。

西荻の駅降りて、昨日しんぽさんにむかった道をふたたび歩いて、
すぐに「西荻一のさっぱり醤油ラーメン提供」の看板を発見。

これが目印。と、いうことで店内に入りますと、
そんなに広くない店内、L字型カウンターには、開店直後ということもあって、
先客の方がオヒトリ、何かが出来るのを待っています。
私は店舗入り口と並行する手前の席に腰を下ろしまして、横を見ると、
中華料理一通りのメニューが壁に貼られております。
私は、平松さんが訪問した時の先客に倣って、
餃子と瓶ビール。ま、朝の宿でのバイキングが僕好みのメニューなので
結構ガッツリいった関係で、半炒飯はたのまず、
あとは、平松さんが食べたワンタンメンをオーダーします。

調理の音が響く厨房内はきれいに整理されていて、
カウンターのうえも綺麗に拭かれていて、中華料理屋にありがちな
脂っぽいぺとぺとした感じは全くありません
店内全体的に小ぎれいな感じですが、ゆったりとくつろげる雰囲気。
付けっぱなしのテレビの音が、まったりとした空間にはふさわしい感じです。

そんなことを考えながら待っていますと、まずは瓶ビールが登場
キリンの一番搾りです。少しだけちびちびやっていると、
続いて餃子が登場。

白い清潔そうな楕円の皿の上に、5個並べられた餃子は、
いいフォルムしています。
焦げの部分を上にむけて提供されまして、そことやわらかい皮の部分は、
それぞれ脂でテラテラしてます。
おお、これはいい感じですよ。
醤油、多めに酢とラー油、そして一味と胡椒を振りまして
タレも完成。ではいただきましょう。

うん、やや厚めの皮の柔らかさともちっとした食感。そして焦げ目の付いている部分の
サックリとした感じのバランスがいいなあ。
もちっとした部分からは、肉や碧のやさいがほんの少しだけ透けてみえます。
中の具も、細かく刻まれた肉や野菜などからたっぷりと肉滴があふれてきて、
オーソドックスながらも、というかだからこそ、しみじみと美味しいです。
ニラ・ニンニク・塩が利いているのも好みですし、ビールにもよく合います。
これは、平松さんが訪れた時のおじさんも、ご機嫌なはずです。

なんかほっとする味わいの餃子にビールもすすみますし、
餃子も美味しいのでぱくぱく行ってしまいそうですが、
ここで飲み、食べきってはワンタン麺の時に深刻なビール&餃子不足になりそうなので
それぞれ自重してペースをおとして、ラーメンの最後の一口のときに、餃子も、ビールも最後の一口になる
泉昌之さんの「ダンドリ君」でダンドリ良夫くんがやった作戦です。
そんな脳内作戦会議をやっている向いでは、手際よくワンタンを包んでいます。
注文を受けてから、その場で包んでくれたワンタンを、入れてくれるようです。
これもさりげなく嬉しいです。

そして、しばらく待ったところで、ワンタン麺が登場です。
こちらも白い丼でして、その中央で鎮座ましましているワンタンは、
こちらも中の肉を皮ごしに透けて見せています。

そして、その横には海苔とかメンマとか白髪ネギが見えますし、
それらをおおうスープは素朴な感じの澄んだ茶色い
醤油ベースの色合い。これは安心できるラーメンのそれです。


まず、一口いただきますと、細くて淡い色の縮れ麺です。
麺はやややわらかめに茹でられていまして、ツルツルっと入ってきます。
そして、スープは看板にいつわりなし、西荻逸のさっぱり醤油です。
見た目はしっかりと醤油って感じですが、
醤油の味や塩分にも穏やかな旨味とさりげない甘味がありますし、
スープのベースの旨味も丁寧なイメージです。
生姜の香りがさりげなく効いていて、さっぱり感を盛り上げてくれますし、
スープ表面に浮かんでいる脂も軽やかなので、あっさりと感飲めます。
これらを、すっきりとした飲み口にまとめているので、 飲み飽きない味わいなのです。
このスープには柔らかめの細縮れ麺がマッチしています。

そしてワンタンですが、半透明になっている大きめの皮ごしに
控えめに包まれているお肉でして。
皮はトロトロになる感じで煮られていて箸で掴むと破れそうなほどの柔らかさ。
予想通りツルっと口の中に入ってきて皮の感触を楽しみながら
しみじみとお肉の味わいも楽しめます。スープとの絡み具合もよく、
このやわらかさと、スープの馴染み方で、麺と一緒にすすりこめます。

チャーシューは、肉の部分がしっかりと煮込まれていて、
軽く噛むだけで、つけだれなどの味と共に、肉の旨味が出てきますし、
脂とのバランスもいい感じで、 肉やスープの旨味を補強してくれます。

メンマも心地よい歯ごたえと、しっかりとしみている醤油のあじが
いい感じで、できあいのメンマではない、素材と味わいのバランスが
さっぱりとしたスープに馴染んでいます。

海苔の味わいと風味もなつかしいかんじなら、
白髪ネギの香りも鼻を抜ける感じで、清涼です。
いいアクセントになっています。

途中で軽く胡椒をふって、食べ終わりました。ごちそうさまでした。

こちらは、メニューも多いですし、地元にあれば、
とても使い勝手がいい店だろうなと感じました。


ちなみに、平松洋子さんの文章はこちらです。
引用させていただきます。

上等な孤独について 平松洋子
こざっぱりとしたL字形のカウンター、気のよさそうな白い上っぱりのお兄さん。昼サガリのワイドショーにチャンネルをあわせたテレビ。先客は半ズボンにホンコンシャツ、ごま塩頭のおじいさんで、機嫌よさそうに半炒飯、餃子、瓶ビールをやっつけている。へぇ居心地のいい店なんだな、「三ちゃん」。もっと早く来ればよかった。がぜんうれしくなり。さっき扉に手を掛けたときの緊張は、あっという間に消えていた。散歩の神様にお礼を言いたい気持ちになってカウンターの丸椅子に腰掛け、「ワンタンメンください」と言った。

うん。納得の味わいです。

そういえば、「三ちゃん」って名前のお店は、
マンガ「孤独のグルメ」のタコ焼きやさんでもありますし、
ドラマ「孤独のグルメ」の新丸子のお店でもあります。
孤独のグルメとの親和性が極めて高いお店です。

そして、このシンプルなあっさりラーメン。
きっと久住さんも好きな味だろうなと思いながら、
こちらをあとにして空港に向かったのでした。

ということで、遅くなりましたが、孤独の軍師江戸巡礼は
以上であります。


ってことで(´・ω・)ノシ
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