2013.11.30 夏を赦す
ドライブの時は、HBCラジオを聞く率が高いのですが
日曜の昼はよほどの用事がない限り、HBCラジオで、
「あの街ツアーズ」、「ガンちゃんの世界一面白いプロ野球の番組」、
「ベストテンほっかいどう」の流れは、昼食か温泉で中断されることがない限りは、
(もしくは遊びで道外に行っていない限りは)絶やさずに結構しっかりと聞いています。

特に「ガンせか」は、毎週のお楽しみといって過言ではない。
だから、食事や温泉はその前後にまわして、
12時から1時の間は可能な限り車で移動の時間にあてているのです。

ガンちゃんこと岩本勉さんの、真面目な野球の話を交えつつも、
どこまで計算かわからない、奔放なワルノリトークと、
それをたしなめながらも、タマにのってしまうフッチーこと渕上アナ
(ファイターズの実況を担当しています)の掛け合いが濃くていいのです。

時にマニアック野球の話から、クダラナイネタトークまで、
1時間があっという間に感じる時間です。
番組の半分以上は今週のファイターズをはじめとしたハムに関するトークですが、
一般の野球ファンなら楽しんで聞けるんじゃないかなぁ。
〔ちなみに、広島だったら、この番組のカープ版みたいのも聴けるのかな?〕

そんな番組の中で、めずらしく真面目に(失礼)紹介されていた本が、
長谷川晶一さんの「夏を赦す」(廣済堂出版)です。

これは、高校3年生の時に、後輩の不祥事で甲子園の大阪府予選すら
出場出来なかった岩本さんと、同学年のチームメートの、
そのときから現在の生活に至るまで、
さらには岩本さんをとりまく家族のみなさんや岩本さんをプロ入りさせた
スカウトそんなどを追いかけたドキュメントです。

岩本さんの母校阪南大高校〔旧大鉄高校〕が、甲子園の有力候補といわれながらも
高三の夏の甲子園予選に出場出来なかった話は、
「野球小僧」(白夜書房 現「野球太郎」(廣済堂出版))に載っていた記事で
知っていたのです。
というか、その記事も大変興味深く読んだのですが、そのメンバーのその後、
というのが気になって、是非読みたいと思っていたのです。

が、地元の本屋は当然のこと、ウイングベイ小樽の喜久屋さんにも、
函館の文教堂さんにも、札幌のコーチャンフォーにもおいてなかったのです。

で、半分諦めモードで、帯広に行ったときに寄った宮脇書店で、
スポーツのコーナーに行ったら


ありました(嬉)

本の帯は破れかけていましたが関係有りません。
速攻で購入し自宅に戻ってから一気読みしました。

そう、読んで気がついたのですが、この本の作者の長谷川晶一さんが、
件の「野球小僧」の記事を書いた方だったのです。

そして、何箇所かで涙があふれそうになりました。

帯にある文章。

「平成元年七月七日。この日、
岩本勉たちは後輩の不祥事で
甲子園への道を絶たれた。
挫けなかった球児たちの再生の実話。
四半世紀を経て、
明らかになる事実と秘密。」

の横に載っているカラー写真

岩本さんとチームメートが笑いながら写っている一枚ですが
この写真の日付こそが、89.7.7 そう、彼らの運命をかえた当日なのです。
この時既に事件はもう起きていましたが、
そんな事件や自分に訪れる運命や未来に思いをはせることなど当然なく、
無邪気に微笑む白の練習着高校球児たち。

この笑顔と、この後にまっている残酷な結果の大きすぎるギャップに、
まずはやられてしまいます。

涙が涸れるまでなき続けるなんて体験をした高校生は果たして何人いるのか。

そして、三年生の多くが野球をあきらめ、
岩本さんだけが、プロ野球への扉を開けることになります。

大学で野球を続けたいとセレクションを受けたものの、三年生の公式戦の実績が0ということで
セレクションにひっかからなかったチームメートも、
岩本さんのプロ入りを素直に祝福をしてくれて、ここでも感動します。

強豪私学で野球をしている自尊心が高い高校三年生が、岩本さんがびっくりするくらい
祝福してくれる。男の友情とか簡単な言葉では表せません。

また、この学年が、いわゆるナマイキな感じではないのです。
自分たちが、伝統という名の理不尽な暴力を先輩から受けていたのにもかかわらず
〔しかもそれで、1年生の時も、公式戦に出場停止を食らっていながらも〕
自分の代できっぱりとヤメようと決意して、ほぼ実行したのです。

そんなチームメートがいたからこそ、救われつつも、あるいみ後ろめたさを感じながら
プロ野球を続けることになったのかもしれません。

また、彼の出自も、豪傑である在日二世の父親と、やさしい在日二世の母親に囲まれ、
高校のときから、「俺、あっちやねん」と広言しているものの、そこには、
父親の「男の根性は辛抱や」という教えがあるものの、
理不尽な思いをしていたでしょうし、

父親も母親も、そんな言われない差別を受けていたのです。

「まいど!」と明るいキャラの裏に後ろめたさがあるように
「俺、あっちやねん」と広言する裏には苦悩とつらさがあるのでしょう。

が、キーワードは赦すです。

どのような環境であっても、耐える力があれば、
環境を理由としないで、出来事を赦し、そこから再び蘇生をしていくことができるのです。

チームメート達は、最初は取材をする長谷川さんに対して当然距離がありましたが
次第に実直にいろいろなことを語りだしてくれて、物語に厚みが出てきます。
それは、やはりさまざまな社会体験や人生経験を得て、
それが強さにつながって、過去を客観的に捕らえることができることができた
そんな力を、本から受け取ることができます。

高校卒業してから一切野球に目を向けずに、子供ができても
子供には野球を遠ざけたものの、祖父がこっそり野球をやらせることで
はじめるようになった息子の野球を熱心に見に行くようになった話なども
時を経たことと、強さを得たことで、自分の割り切れなかった思いを乗り切った話です。

そして、最後は事件の当事者に手紙を書くのですが、
そのシーンでも涙があふれてきました。

そして、最後までスリリングに読むことができまして、このブログで興味を持った人にも
このワクワクドキドキする感じを共有してほしいので、内容はこれくらいにしますが、
とにかく息もつかない感じで読み終わりました。


AMAZONの書評では、

「元日本ハム・岩本勉には誰にも言えない秘密があった。かつて、彼は「岩本勉」ではなく「大山勉」だった。彼には長い間、ひそかに胸に秘めていた想いがあった。家族のこと、仲間たちのこと、そして自身のこと......。平成最初の夏、阪南大高校野球部に不祥事が起きた。その「事件」は3年生20名の運命を変えた。岩本は「後ろめたさ」を抱えたままプロ入り。その後、16年の現役生活をまっとうし、岩本の同級生たちもそれぞれの人生を生きた。四半世紀を過ぎて、今明らかになる事実と秘密。奪われた夏から始まる元球児たちの再生の実話。」
と書かれています。


長谷川さんの筆致も、綿密に取材をしながら、淡々としかし着実にテーマに迫っていく
そして、取材対象と一緒に悩んだり、共感したりして、
さらには締め切りなどの外部の悩みがありながにも、物語を動かしていって、
この取材の過程そのものもドラマチックなのです。

高校野球や野球もの、というカテゴリーを超えた、
いろいろなスポーツノンフィクションの中でも、相当上のレベルの本だと感じました。

ちなみに、これも読み終わって気がついたのですが、長谷川さんは、
「最弱球団 高橋ユニオンズ青春記」〔白夜書房〕の著者でもありました。
こちらも大変面白く読んだことを追記します。

欲を言えば、この本を件の当事者が読んでくれて、
その感想めいた話が長谷川さんの耳に入ってきて…
といった後日談が読みたいなぁ、と思ったりして。


あと、阪南大高校の全身大鉄高校といえば、
近鉄の前進である大阪鉄道が出資した高校ですが、
僕がドカベンにハマった延長で高校野球に興味を持って
高校野球の雑誌まで買い出した小学生のころ、
1977年は春夏と連続出場しています。

77年の春は、山沖投手率いる部員12名の高知県中村高校が
24の瞳旋風を巻き起こし準優勝。
優秀したのは、定時制課程に通うエース東投手の箕島高校
夏は1年生エースバンビ坂本投手率いる東邦高校を決勝で下し、
東洋大姫路高校が優勝した年です。

春は緒戦で銚子商業に負けてますが、
夏は、準決勝まで進出し、東邦に敗れています。

エースの前田キャッチャーの鍛冶本などの名前は、いまだに印象に残っています。

この春夏連続出場を最後に、大鉄高校は阪南大高校になり、
甲子園から遠ざかっていますが、
阪南大高としての甲子園初出場はいつになるのでしょうか。



かつて、コミュニティー放送局FM「ラジオふらの」(富良野市)の
月曜午後五時からオンエアーしていた
FURANO History Factory(F.H.F.フラノヒストリーファクトリー)の
パーソナリティーをつとめていたイトー×aniでした。 (´・ω・)ノシ
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