先日さいたま市の市長選挙が行われて、現職市長が再選を果たしました。
世間的には、対抗馬である、自民・公明推薦の候補が、
民主推薦の現職に対してどれほど戦えるかというのが注目されました。
結果は5万票以上の差をつけて現職の勝利ということでした。
また、投票率が30%代ということでも、話題となりましたが、
僕が注目したのは、得票数第3位の候補の吉田一郎氏です。
(ただ、北区限定で言うと、得票率がトップでした。それだけ
地元の人には信頼されているということではないでしょうか)

僕が彼のことを知ったのは、彼が主宰しているサイトの
「世界飛び地領土研究所」の中にある、「消滅した国々」「非公認の国々」と、
それらの国のエッセンスをまとめた「国マニア」(交通新聞社)です。
だから、ヘタリアが流行るちょっと前に「シーランド」の存在を知っていたのは
まさに、このサイトと本のおかげだと行って良いのです。

彼は2001年、さいたま市の合併解消を公約に掲げさいたま市長選に立候補し
落選し、その後、立候補をした市議選も落選しますが、
2007年のさいたま市議選で当選して以来、一度辞任して再当選したりしてますが、
市議を続けていますが、一貫して主張しているのが「大宮独立」です。

さいたま市議会でも、
「大宮市の分離独立は可能か」「可能ならばどういう手続きになるか」を吉田氏が質問し
大真面目に答弁されている様子がYou Tubeに揚げられています。
市議会でこんな質問が出ることが異例でしょうし、
独立の法的な手順について、きちんと回答されていて、
真面目なやりとりなのですが、内容が内容ということで、
どこか英国のコメディーのようなパロディー的面白さがあります。
が、まさに、大宮独立の闘志と言っていいです。
大宮のコンテンツを大切にする趣旨のサイトの名前も「大宮亡命市役所」でしたし。

そんな氏の著作により「ソマリランド」の存在を知って、その「謎」「未知」ぶりに惹かれ
「リアル北斗の拳」ことソマリアも含めて行ったのが、高野秀行氏です。

高野秀行さんは、海外の辺境を舞台に、探検をはじめとした
オモシロ体験をたくさんしていて、それを本にしている方です。

そもそもデビュー作が、彼が、早稲田大学探検部で
アフリカの奥地にUMAモレーレ・ムベンベを探しに行ったという
「幻獣ムベンベを追え」(集英社文庫)で

当ブログにも頻出している畏友p氏は、
僕が、これまた高野氏の傑作青春記である「ワセダ三畳青春記」を読んでいるとき
p「何読んでるんスか」とか聞いてきて
僕「いやー、高野秀行の…」と、言うやいなや
p「ムベンベかっ!」と間髪入れず言ったことを紹介しました。
流石p氏、守備範囲の広さは少し前のファイターズの外野バリです。

「ムベンベ」も面白いUMA探しの本でしたが、そのほかにも
UMA探しの怪作である、トルコ東部のワン湖に棲むといわれる
巨大未知動物「ジャナワール」の真偽を求めてトルコへ行ったところ、
「ジャナワール」に思わぬ政治的な思惑が絡んできていることに気が付きながら
調査を続けた最後の最後で湖に浮かぶ謎の黒い物体という「怪獣記」(講談社 刊)に、
怪魚「ウモッカ」を探しに行こうとしたものの、びっくりするような
事態に阻まれてしまう、「怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道」(集英社文庫)など、
UMA探しの本は軒並み傑作。

さらには、ミャンマー奥地でケシの栽培をしたり、西南シルクロードを踏破したりと、
辺境探検ものも、軒並み読み応えがあるのですが、そんな話の中でも
トップクラスの手応えを感じたのが、本作です。

ソマリアは、かつて「FURANO History Factory」の番組内でも
何度となく取り上げたため、当ブログでも何度も出てきている話題ですが、
91年にバレー政権が崩壊してのちに、中央政府を持たないで、
「崩壊国家」とか「失敗国家」などとアリガタクない異名を賜っている国です。

さらに、その中には、世界で一番平和な非公認の国であるソマリランドがあります。

国際的にはソマリアの一部で、対外的に認めている国がどこもないソマリランド。
そして、世界で一番平和というのは、決して大げさではない。
ユニセフ大使の某Aグネス女史が、ソマリアに行ったとアピールしたものの
実はそこがソマリランドだったのが、ネットでバレて、
しかも、その時にAグネス女史は、ソマリランドは正式な名称ではなく
国際的にはこの地もソマリアだと詭弁を弄して、
ますますネット民の火に油をそそぐといったことで、
話題になったりもしましたが、
そんなとこにも、明確にソマリアとソマリランドの治安の差が見て取れます。
あと、やくみつるさんがソマリランドを訪問したりしてました。

僕も「失敗国家」の論文とか、吉田さんの本とか外務省の海外安全ホームページなどで
学習をしてから、ラジオ番組に挑んだのですが、なんとなく分かったような気になっても
実際のところは、他のアフリカではなく、なぜ、ソマリアなのかということや、
無政府戦闘状態で、リアル北斗の拳が20年以上も続いているのかという疑問は解けずに
わだかまりのように残っていたのです。
そして、一方でなぜソマリランドがそこまで平和なのかについても、
イマイチすとんと落ちなかったのです。が、この本を読んで、氷解とまではいきませんが、
いい感じで疑問が解決する糸口をつかむことが出来ました。

「ソマリランド」の「謎」「未知」ぶりに惹かれて、さらには国内などには
そこについて書かれた本がない。しかも、お隣の「ソマリア」も
「内戦」とか「海賊」というイメージこそあるものの、
こちらの政情についても、氏を納得させるものがなかった。
そんな秘境のにおいを感じたことで、実際に行ってみた高野氏が、
まずは「ソマリランド」 を訪問します。

行ってみたら、独自に憲法を制定し、憲法に基づいて、民主的な政党政治と
公平な選挙が実施され、通貨も経済も他のアフリカ諸国よりも安定し、
全国一斉の高校入試が実施されるほど教育もしっかりほどこされていて、
首都のハルゲイザは、「女性や外国人が夜普通に歩ける」ほど
治安がしっかりしているうえ、ほとんど市内では銃を持った人を見ないのです。

ここまでは吉田氏の著作と同じですが、それならなぜそのような体制になったか
ということを実際に行ってみて調査をしました。
人づてに人脈を広げていって、紹介された旧ソマリア政府の関係者とか、
ソマリアやソマリランドのマスコミの人などと一緒に
国内をみてまわるのですが、この人脈を次々に広げていくのが
冒険活劇的で面白いです。しかも、車の移動中に死ぬ思いをしていますし。

さらに、人脈を広げていくのが、カートという覚醒作用のある葉っぱで
夜な夜なこの葉っぱを地元の人と噛んでいて、カートに対して批判的な人が
ヒくぐらい、カートにハマっていまして、
なおかつ片言ですが、ソマリ語が話せてソマリ語でジョークもいいながら
ソマリ人の懐にとびこんでいくのです。

そこでは、ソマリランドの経済が、海外からの仕送りによってなりたっている
という脱力した事実も知りますが、
ソマリアが内戦が続き、ソマリランドが安定している理由を
氏族制度を維持したイギリスの殖民支配と、
氏族制度を壊したイタリアの殖民支配の差、という仮説をたてます。
〔現ソマリアは、旧イタリア領で、ソマリランドは旧イギリス領です〕
あと、カートでラリっているから平和なのかも、などとも考えています。

さらに、ソマリランドでの仮説を明らかにするために、
「リアル北斗の拳」のソマリアとともに、ソマリアと、ソマリランドの間にある
こちらも自称独立国家で、現在ソマリアの海賊といわれている人たちの
本拠地になっているために「リアルone piece」と氏が命名した
「プントランド」を訪れたのです。

そこで、ソマリランド同様に、人づてで人脈を広げていきながら
カートを噛みながら本音を引き出していき
「民主主義国家」にして「地上のラピュタ」のソマリランド
「海賊国家」にして「リアルone piece」のプントランド
「崩壊国家」にして「リアル北斗の拳」のソマリアの三つの類似点とか
相違点を明らかにしています。

その過程では、プントランドでは実際の海賊にあったりとか
ソマリアの首都モガディシオで、20代の女性でありながら
放送局の所長になってしまう行動的で魅力的な女性の協力があったりなど
ここも次から次へと何が起こるのかわからないという、読みながら
ワクワクするような展開が続いていきます。

そんななかで明らかになる海賊の真相は、決して、漁業をやっていたが
貧しいので海賊になった、という単純なものではないことがわかります。
そもそも遊牧民であるソマリ人が、漁師を低い身分のものとして
見下しているというのも、現地に行かなければわからないことでしょう。

そしてソマリア内戦も、悲惨ではありますが、中央政府が20年以上ないわりには
生活がなりたっているのは、教育とか経済などは氏族が行っている
究極の小さな政府であることなども同様です。

しかも、プントランド・ソマリア、と南へ行けば行くほど
緊迫感をましてくる市街の様子。モガディシオではほとんど自由に出歩けない、
しかも、再訪したときには銃撃戦にも遭遇します。

複雑怪奇な氏族制度は、生活の隅々まで影を落としていますし、
その内戦の敵にも味方にも、氏族が影響をしています。

さらには、国内での漁民差別ではないですが、差別をされている人が
差別をされているゆえに、より過激な勢力の一員として戦っていくので
内戦が進化していくという、人間の本能的な構図も見て取れます。

が、それすらも高野さんのペーソスあふれる文章で
淡々と書き綴られていると、どこか遠い世界のように感じています。

そして、読み進んでいくうちになされる驚きの提案。

日本はソマリランドのハイパー民主主義を見習うべきである。
世界はソマリランドの独立を認めて、ソマリランドに投資をして
平和が金になることをわからせることが、
ソマリア内戦も、プントランドの海賊も解決をする。

ここにいたっては、快哉を叫ばざるを得ない。
冒険活劇にして、謎解きの本だったのですが、読んでいくうちに
社会変革と、国際紛争解決の提言になっていく。

この硬軟と清濁をあわせもつ懐の広さと触れ幅が
高野氏の本を読んでいての最大のカタルシスです。

ソマリア問題については、このあとも、続いていくでしょうし、
高野氏もこのあとソマリアやソマリランドに関して、
さまざまなアクションをしていくでしょうから、そちらも楽しみにしたいと
思うのですが、

今のところは、2013年に入って、今のところもっともハマった
ノンフィクションであるということで、
はげしくオススメいたします。機会があれば呼んでみてください。

あと、この本を読んだ直後に、イカロス出版から出ている
『MC☆あくしず』MOOKシリーズは、『にょたいか!! 世界の独裁者列伝』の
バレーのところを見返してしまいました。







かつて、コミュニティー放送局FM「ラジオふらの」(富良野市)の
月曜午後五時からオンエアーしていた
FURANO History Factory(F.H.F.フラノヒストリーファクトリー)の
パーソナリティーをつとめていたイトー×aniでした。
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